腕時計

 子供の頃から、少し拘りが強すぎるきらいがあった。
 中学2年か3年の頃、何かの祝いとして父に買ってもらったのは、当時の西ドイツ製のSINNの機械式クロノグラフだった。
 丁度日本に初めてSINNのクロノグラフが紹介された頃だったと思う。
 中学生が身に着けるものとしては甚だ分不相応な高価な腕時計だったが、何故かこの腕時計を買ってくれた。
 この時計はそれ以来、相当長く愛用していたように思う。
 思い返せば、青春時代のほぼ全てをこの時計と共に歩んでいたのではないか?と言っても過言ではない。
 モデル名は、確か103という手巻きモデル。後に自動巻き仕様となり、曜日機能も日付機能に追加された『103B.AUTO』という名機となるもので、確か1986年に開店したばかりのMONOショップ上野松坂店で購入したものだった。

 手放したのは2000年を過ぎた頃。
 理由は、まったくと言っていいほど身に着けなくなったからだった。
 社会人になったのは1995年の3月からだったが、道路工事の現場に身に着けるような腕時計ではなかった。(というか間違いなく壊れる)
 ホワイトカラーになってからも、この分厚い腕時計はワイシャツの裾を簡単に摩耗させたし、非常に重く、また良くぶつけた。
 そんな折、厚さの薄いビジネス用の腕時計をいくつか父から譲りうけて、それらを身に着けるようになったせいでどんどん使わなくなっていった。
 SINNの103は、スーツを着たビジネスマンが身に着けるような腕時計ではなかった。

 その後は、子供の頃から欲しかった腕時計のオールドモデル(SEIKOのジウジアーロデザインのスピードマスターなどは最たる例だろう)を購入して使ったりしていたこともあったが、やはり新品が欲しくなって自分のメインの腕時計となったのは、登場したばかりのSEIKOの新ブランド『ブライツ』のクロノグラフだった。

↑傾斜されたパネルが斬新だった

 ビジネスクロノグラフと言っていいくらい小ぶりで肉薄なビジネスウォッチであり、とても使い勝手が良かった。
 そして、もう一つのお気に入りがグランドセイコーだった。
 高額な機械式ではなく、グランドセイコーとしても今ではレアとなったクォーツ式で、深いブルーの文字盤が美しく、存在感もあってお気に入りだった。
 しかし、2003年で会社員をやめてしまってからは、これらを身に着ける機会は少なくなり、押し入れにしまい込んでしまった。
 また、結婚の結納返しで妻に選んでもらったのが、ブライトリングのモンブリランという繊細で美しい宝石のようなクロノグラフだったが、これも普段使いしていいような腕時計ではなかったので、よほどの食事の場などを除いて身に着けることなく、押し入れにしまい込んでいる。
 腕時計としては不本意だろうが、そういった記念品なので仕方がない。
 普段使いする腕時計は、ブライツ以外は2万円以下の安物になった。
 視認性が高く、安価なクォーツ式。
 やはりクロノグラフや飛行時計の類が多かったが、これらは1年ほどで動かなくなってしまうので、電池交換もされずに押し入れにしまい込まれてしまう。
 件のブライツは、省電力であるために5年以上電池が持つので、今も使うことがあるが、夜間などでは視認性が悪いので、デジタル時計を使う機会が増えることになった。
 そう、Gショックである。
 自分はブームとかにはひどく疎いので、最初に手に入れたGショックは初めて有機ELのバックライトを搭載したモデルからだったが、さらに『フィッシャーマン』というタイドグラフを搭載した釣り用のGショックを手に入れてからは、気に入って数種類を手に入れるようになっていった。
 しかし、これらも所詮はタフなだけで電池が切れてしまえば、電池交換まではされずに押し入れにしまい込まれてしまう。
 そんな中、2018年9月にフロリダ釣行が決まった際、父から必要だろうとプレゼントされたのが『GW-M5610BA-1JF』だった。

カラーリングが素晴らしい

 一見すると旧態依然とした古いデザインのGショックだが、後にこのモデルこそが自分の理想としていた最高の腕時計であることを思い知らされることとなる。
 まず、このカラーリングが最高だ。
 ブルーとブラックは最も好きなカラーリングなので、それだけで素晴らしい。(これは好みの問題)
 そして、このサイズ感。
 より大きなGショックはいくらでもあるが、このサイズ感こそが必要にして最良だったのだ。
 ソーラー時計なので電池交換は不要、しばらく使っていなければ勝手にスリープ機能を発動し、電波時計なので時間はいつも正確。
 そしてワールドタイム機能もあるので世界中で使える上に、アラームやストップウォッチなどの必要にして最低限の機能が全て備わっている。
 とどめはオートライト機構だ。
 手首を傾けるだけで暗所で有機ELが発光するというオートライト機構は素晴らしく、夜間にいちいちボタンを押さなくとも時間を読み取れるし、必要であれば簡単にオフにできる。
 そして、Gショックならではのタフさは使用する場所を選ばない。
 スーツを着るような仕事ではないので、宝飾時計を身に着ける必要がなくなったので、腕時計選びは機能に全振りできるのが良い。

 あまり話題にすることはないが、腕時計は自身の拘りの最たるものだ。
 どうしてその腕時計をしているのかを聞いてみるのも、良い会話のきっかけになることがあることを知っておいても損はない。

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