ハーレーダビッドソン 1996 FXDL
別段、ハーレーダビッドソンに憧れがあったわけではなかった。
ジョン&パンチも、ハイウェイパトロールも、ヘルズエンジェルズも、イージーラーダーも別にどうってことはなかった。
どちらかと言えばマッドストーン的な、カワサキのZ系の大排気量モデルに代表されるような感じの方が圧倒的に好みだったと思う。
ゼッツーは不動車になったまま埒が明かないので、高値で売れるうちにと中古市場で売ってしまうことにし、壊れても部品がいかようにでもなると言われたハーレーダビッドソンを手に入れることにした。
とはいえ、手に入れるにしても国産車とはずいぶん勝手が違っていた。
何せ年で国内に流通するモデルの数には限りがあり、その年のイヤーモデルはほぼ完売となっていて、翌年のモデル待ちがザラだったし、そもそも取り扱うバイク屋も正規取扱店のみでとても少なかったのだ。
当時、御徒町にあった小川モータースを尋ねてみたところやはり在庫はなく、「笹塚にある福田モータースに唯一ダイナローライダーが1台だけ残っている」と聞いて、そのまま笹塚へと向かった。
考えてみれば、福田モータース(以降は『笹塚』と記す)はモトグッチの代理店としては有名だったが、細々とハーレーダビッドソンも取り扱っていたようで、少ない割り振りの車体が運よく売れ残っていたらしい。
自分でも驚くほどあっさりと契約して、晴れてハーレーダビッドソンのオーナーとなった。
FXDL ダイナローライダー
ダブルクレードルフレームにラバーマウントされた88キュービッグインチ(1340cc)のOHVビッグツインを搭載した、新世代のハーレーダビッドソンだった。
純正のハンドルだけはいただけなかったので、883のハンドルに付け替えたが、律儀に買った場所であった『笹塚』に整備させたのが大きな間違いの始まりだった。
運が悪いとしか言いようがないのだが、『笹塚』の整備能力のなさと言ったら本当に酷いものだった。
何度メンテナンスに出しても、いつまでも調子が良くならない。
それどころかメーカーからリコールが掛かり、『笹塚』に整備に持ち込むたびに、調子がどんどん悪くなる。
流石に辟易して地元のバイク屋の先輩に無理を言って見てもらうと、キャブレターのジェットが間違って組付けられていたことが判明した。
「『笹塚』はありえないくらい整備のできないダメなバイク屋」だということが判明し、この件についてクレームをつけたものの、適当な言い訳と責任逃れの応対をされて非常に腹が立った。(これまでの整備費用の金を全部返せよ!)
その瞬間から、『笹塚』とは縁が切れた。
以来、近付くことも一切なくなったが、気か付けばすでに事業譲渡で消滅した模様。
まあ、当然の結果だわな。
先輩による整備のもとで復活したダイナローライダーは快調そのものだった。
波長の合ったバイクで、結構な長距離も疲れず走れたし、その気になれば1340㏄の排気量と暴力的なトルクで速く走ることもできた。(といっても120㎞/hまでね)
短いながらもシーシーバーを取り付けていたので、安心して二人乗りも出来たので、妻(当時は婚約者)とのタンデムツーリングも存分に楽しめた。
妻は車の方がよかったようだけれども。
思い返せばたかが人間ひとりを移動させるのに、1340ccの排気量は明らかにやり過ぎだった。
確かに余裕はあったが、50㏄のスクーターですら人間ひとりを移動させるのに苦労はない。
ただし、低回転で走り続けるのと、高回転で走り続けるのを考えれば、やはり前者の方が心地よく走れる。
ハーレーダビッドソンは、そういうオートバイなのだ。
結婚するに際し、車をビートからシビックに買い替えることとなり、ビートの下取りで足りない分をダイナローライダーが賄うこととなった。
市場に流してしまうと二度と手に入らなくなるからと、先輩が無理して買い上げてくれた。
手放したことを後悔しているかと聞かれれば、そうでもない。
ただ、今も先輩の店に鎮座するローライダーを見るたびに、もう自分のものではないのに其処にあるという不思議な感じがする。
ローライダー以降、先輩の所有するW1スペシャル(650㏄)を、何故か原付のモンキーの代車で貸し出されたりしたが、自ら進んで大排気量のオートバイには乗っていないかった。
これから先、大型のオートバイに乗ることはどうやらなさそうだが、あれだけ恋焦がれたオートバイの世界から少し離れてしまったことに、一抹の寂しさのようなものを感じないわけでもない。
今は110ccのスーパーカブPROになったが、オートバイを降りた気はしていない。
でも、仕事用のスーパーカブは、仕事用の道具でしかないんだよ。
再び乗りたいオートバイは何かと問われたら、何と答えるだろう?
W1?マッパ?ZⅡ?
皆、カワサキと予測するかもしれないけれど、実はスズキのGSX750E4だったりする。
府中の試験場で乗ったきりだけれど、またあのオートバイに乗ってみたい。
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